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132ら大規模大学を中心に入学募集定員を超える割合が厳しく制限されることで合格者が減っているため、その分、定員割れ校数が減ってきましたが21年からは増加に転じています。大学選びの傾向について触れておきましょう。ここ数年の傾向のひとつが、「安全志向」です。リーマン・ショック以降景気は回復していますが、それでも大学進学にかかる経費削減は大きな課題です。なるべく安上がりに大学に進学してほしいと考える保護者が多いのです。その結果が国公立大人気の高さに表れています。近年は確実に合格できる大学を目指す「安全志向」、浪人を避ける「現役志向」、自宅から大学に通う「地元志向」が高まっています。コロナ禍で景気が後退すると、この傾向はより強まると見られます。大学の二極化進み、志望校選びが難しい時代へここ数年、私立大の志願者は増加傾向でしたが、近年は大幅減。志願者が集まる大学と集まらない大学で、「大学の二極化」が進んでいます。大学はやがて、「入試を実施しても全員合格に近いため、試験を実施する意味があまりない大学」と、「厳しい入試が展開される難関大学」との二極に分かれていくということです。このような状況になってきますと、志望校選びが難しくなります。学力を測る尺度である偏差値が、全入の大学では役に立たなくなります。5割近くの私立大で定員割れが起きているわけですから、進学しようと思えばどこかの大学に進学することが可能です。それが進みたい大学であれば、言うことないわけですが、なかなかそうはうまくいきません。難関大の入試は厳しいままだからです。大学の選び方は大きく分けて3通りあります。ひとつは大学で学びたいことが決まっていて、それを実現できる大学を選ぶという方法です。その分野で学べば、大学卒業後の進路まで考える余裕があり、目標が早く定まります。もっともオーソドックスな大学選びの方法です。一方、行きたい大学が決まっている場合もあります。どうしても○○大学に行きたい場合は、学力と相談しながら、その大学で自分が学びたい分野を探し、受験する学部を決めていくことになります。特に文系でよく見られる方法です。最後は前記のどちらでもないという時の選び方です。これは様々な視点から選んでいくことになります。この場合、学力で合格できそうな大学を選びがちですが、これはあまり感心しません。その前に自分なりに絞っていくことが必要です。多くの受験生は、高校で既に文系か理系かは選んでいるはずです。さらに、自分に向くかどうかもそれぞれの学部で何を学ぶかを知れば(本書155ページからの「大学・学部・学科選び入門」参照)、わかってくるでしょう。大学選びについても、自宅を離れて進学していいかどうか、親と相談して決めれば絞ることができます。また、学部によって学費の差もあります。139ページの表5・学部系統別の平均の学費を参考にしてください。ぼんやりとでもいいから、進学したい学部、大学を決めていくことが大切です。入試に大きな影響を与える大学入学共通テストここからは、現行の制度における入試状況について、大学入学試験の現況から見ていきましょう。国公立大の一般選抜は大学入学共通テスト(以下共通テスト)の結果が不可欠です。23年の共通テストには51万2581人が志願しました(表3参照)。昨年の志願者数と比べて1万7786人(3.4%)減少しました。また平均点は、文系・理系ともに大きくアップしました。かつてのセンター試験では、平均点がアップすると、国公立大の志願者が増えて私立大の志願者が減り、逆に平均点がダウンすると、その逆になる傾向にありましたが、近年はこうした傾向が影を潜めています。国公立大の志願者は、12年からセンター試験の平均点に関係なく減少が続きました。国公立大人https://www.univpress.co.jp/16年度入試から、文部科学省が大規模大学の入学定員に対する入学者の超過率を厳格化させたため、私立大では合格者の絞り込みが進んで難化を続けてきましたが、23年入試から、入学定員ではなく総定員での超過率を見るよう変更されます。これにより、退学者の分だけ入学者を増やすことができるため合格者も増え、難化に一定の歯止めがかかるのではと見られています。私立大入試2023入試TOPICS02