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126私は普段、学生諸君に対して「たくましい知性」、「しなやかな感性」、「ひびきあう理性」を身に付けてほしいと話しています。受験生の皆さんが今目指している大学入試の問題には必ず答えがありますが、世の中の問題には答えがあるとは限りません。そうした難問に立ち向かうために必要なのが「たくましい知性」です。問題の解決に向けて自分なりの仮説を立て、考察して検証する。課題を見つけてまた考える。それを繰り返すことで「たくましい知性」は磨かれます。「しなやかな感性」とは、ダイバーシティ、多様性を認めることと言ってもいいでしょう。早稲田大学では、性別、国籍、宗教や信条などに関係なく、誰もが平等に学んでいます。日本全国、世界中から学生が集まる早稲田には、異なる価値観を持つ学生が交わり、多様性を理解し、互いに敬意を持って尊重しあい、学べる環境があります。この学びの環境において重要なのが「ひびきあう理性」です。多様性の中で理性を持って互いの思考を高め合い、共鳴する。そして新しいアイデアが生まれるのだと思います。誰にでも居場所がある。これが早稲田大学の伝統であり、140年の歴史を経ても変わらない誇りです。世界各地、日本全国から学生が集い、学問はもちろん、スポーツ、文化活動などあらゆる分野において、好きなことに打ち込める場や仲間が存在します。自由と多様性の中で自分を磨き、成長を実感することができるでしょう。早稲田大学の創立者である大隈重信は「一身一家一国のためのみならず、進んで世界に貢献する抱負がなければならぬ」と語りました。人類社会に貢献する志を持ち、皆さんとともに学び合える日を心待ちにしています。早稲田大学総長田中愛治新型コロナウイルス感染症の影響で社会の在り方が大きく変化した今、自分に必要なスキルを積極的に習得し、それらを基盤として自ら一歩ずつ道を切り拓いていく「個」の成長が、何よりも大切であると考えられます。そのためには、日本のみならず、世界へ目を向けることが必要です。国籍や言語、文化、宗教、価値観など全く異なる背景を持つ人々との議論を重ねることで、初めて見えてくる自分の姿があるのです。本学の使命は、教育の質を保証し、「個」の成長を後押しすること。世界とのつながりを当たり前にし、学生一人ひとりが必要な知識や技能を自ら選び取って身につけていけるような、主体性を育む教育体制を整えていきます。明治大学という学びの場が世界とつながり続けることで、学生が「個」としての強さを最大限高めていくことを願っています。そのため、実留学(短期・長期)と併せて、ポストコロナ時代に向け、オンライン交流と海外渡航を組み合わせたプログラムや、オンライン留学なども展開しています。2031年の創立150周年に向けて、持続可能な社会の構築もこれからの課題の一つです。特に学問による社会への貢献を重要視する明治大学では、すでにSDGsにかかわる研究が数多く進められています。明治大学はこれまでも、あらゆる困難を好機と捉え、建学の精神「権利自由」「独立自治」を胸に、変革を起こしてきました。今後も「個」の成長と豊かな社会の実現に向けて、新たな課題に挑戦し続けます。明治大学長大六野耕作