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―阿部さんの大学生活についても聞かせてください。阿部私は「大学でこれが勉強したい」という確固たる目標はなかったのですが、「経営学」を学んでおけば、何かしら社会で生かせると考えました。入学後は、幅広い学びに挑戦できることが純粋に楽しくて、中でも興味が深まったのが心理学です。当初は点の知識でしたが、少しずつ経営とのつながりがわかって線となり、企業経営における組織づくりや、組織で人を動かす際にも心理学の知見が有効だとわかりました。ゼミでは国内の携帯キャリアを題材にして、過去の経営戦略の違いが、業績にどう反映されているかを分析していますが、社会情勢との関わりや、社内でどのような心理的な働きかけが行われたのかも調査できればと思っています。遠藤阿部くんは3年生のゼミ長です。常に先を見越して方向性を提示しながら、周囲の学生にも意見を出させるなど、リーダーシップやファシリテート能力が優れています。周囲の発言の真意を汲み取り、議論を先に進めていく力もありますね。阿部ゼミ長になったのは、人や組織へのどのような働きかけがモチベーションや能力の向上、組織としての成果につながるかに興味があったからです。加えて、私はゼミ生全員の個性をある程度は把握できていると思ったので、自分が上手に工夫をすれば全員が意見を出しやすくなると考えました。みんな意見があっても、自信を持って発言できないケースがありますが、新しい考え方に触れることで視野が広がると思うので、私の力で発言しやすい雰囲気をつくり、深い議論ができるゼミにしたいんです。参考にしているのは、雑談的に話し合いを進める「ワイガヤ」という本田技研工業株式会社の手法です。ただ、有意義な議論をしようにも知識不足を痛感することも多いですね。遠藤そうですね。高校までの学習内容も含め、どうしても「基礎工事」としての知識の修得は不可欠になりますね。―「基礎工事」の大切さについて、詳しく教えてください。遠藤大学での「基礎工事」は、授業です。経済学や経営学など、総論と呼ばれる科目での基礎固めなくしては、社会での応用も実践もできません。新たな知識の修得によって新たなコンセプトが生まれ、実現可能性の高いイノベーションの芽が育つのです。知識はいわば共通言語となり、応用・実践領域での議論が深まることで、アクションを起こす際の説得力も高まります。大塚仕事でも知識がないと対等に話ができませんので、社会人になっても日々新たな知識を吸収しています。そうできるのも、この学部での経験があったからこそだと思います。その上で私は、ひとつの情報を多角的に分析することを大切にしています。例えばニュースで情報を得た場合、日本のメディアだけではゼミが人を動かし組織を動かす実践の場に学ぶ意義がわかれば学ぶ意欲が高まっていく小楠直さん政策イノベーション学科2021年3月卒業楽天グループ株式会社勤務埼玉県立浦和西高等学校出身