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138制限している大学があり、共通テストの成績だけで門前払いにされてしまうことがあります。前述の通り、私立大は同じ大学、同じ学部でも複数回入試が行われており、何度受けてもかまいません。複数の合格校の中から、入学する大学・学部を決められます。私立大では近年、入試の多様化が進みました。受験生を多角的に評価しようという狙いで、数多くの方式が実施されるようになってきています。例えば「地方試験」を実施する大学が多くあります。これは大学所在地と異なる地方に試験場を設け、わざわざ大学まで受験に行かなくてもいいようにするものです。これ以外にも「試験日自由選択制」があります。これは例えば、3日間同じ学部で試験を実施し、他大学との併願のことを考え、都合のよい日に受験すればいいようにしたものです。どうしてもそこに入りたければ、3日間連続して受けてもいい大学もあります。合格発表は1回で、偏差値法を使って判定し、問題の難易で差がつかないように工夫されています。また、共通テストの成績だけで合否が決まる「共通テスト利用入試」や共通テストの成績と大学での試験の成績を合計して合否判定する「共通テスト併用方式」などもあります。近年増えているのが、「全学部統一日程試験」です。同志社大、立教大、明治大、法政大、青山学院大など多くの大学で実施されています。これまで学部ごとに行われていた入試を、1日で全学部(文系全学部のみなどの場合もある)が入試を実施するという方式のことです。今まで難関大では受験機会が少なかったのですが、これにより受験機会が増え、人気を集めています。また、英語の外部試験を利用した入試も増えています。15年に上智大がTEAP(アカデミック英語能力判定試験)利用入試という英語の外部試験を利用した全学部型の入試を実施して志願者を増やすと、翌年以降、多くの大学が同様の入試を実施し、急速に広がっています。多様化しているのは入試だけではありません。キャンパスの新設や移転なども積極的に行われています。首都圏では、21年に横浜市にみなとみらいキャンパスを開設して国際日本学部・外国語学部・経営学部を移転した神奈川大が、22年は横浜キャンパスに建築学部を新設します。さらに横浜キャンパスには、23年に平塚市の湘南ひらつかキャンパスから理学部が移転し、理工系学部が集結する予定です。中央大は、これまで4年間、八王子市の多摩キャンパスだった法学部が、22年入学者は2年次から、23年以降の入学者は4年間、東京・文京区に開設する茗荷谷キャンパスで学べるようになります。西日本でも、立命館大では3年次まで大津市のびわこくさつキャンパス、4年次が茨木市の大阪いばらきキャンパスだった情報理工学部が、22年入学生から3年次も大阪いばらきキャンパスで学べるようになります。いずれも利便性の高い場所にキャンパスを新設したり、教育資源を集中させることで、学生の学びやすさや、学部間の連携の向上を図っています。このような学部・学科の移転、都心キャンパスの新設など、ダイナミックな大学改革は受験生の注目を集め、倍率アップの要因になりますので注意が必要です。学費が不安でも奨学金制度充実大学に合格したら、当然納めなければいけないのが学費です。入学金や授業料の額も大きく様変わりしています。表5の学費の表を見てください。私立大の社会科学系(法学や経済学などを学ぶ系統)の初年度納入金の平均額は約127万円で、理工系は約166万円。両系統ともに30年前との比較では3倍以上値上がりしています。国立大の学費の上昇幅は、私立大以上です。この30年で5.6倍(14万6000https://www.univpress.co.jp/文系の志願者は、コロナ禍で海外との往来が滞っているため、外国語、国際関係が大きく減少しています。社会科学系では、人文科学や経済・経営・商学・社会の志望者が前年並みを維持する一方、景気に対する不安感を背景とした公務員志向の強まりから、国公立大・私立大ともに法の志望者が増えています。コロナ禍が追い風になり注目度が高まっているデータサイエンスを含む総合科学は、全体として志望者増となっています。文系学部の動向2022入試TOPICS04