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力の試金石として楽しみにしています。一貫教育プログラムには、法科大学院の授業を学部で先取りするプログラムがあります。目指すロールモデルである先生による法科大学院の授業を先取りすることは、大きなモチベーションにつながります。学部と大学院が地理的に近くなる23年以降、このプログラムがさらに充実することになります。―文理融合教育に力を入れているそうですが、その理由を教えてください。中央大学の建学の精神である「實地應用ノ素ヲ養フ」は、現実に起こる問題を自らの力で解決するための素養を身に付けるという意味です。現代社会に生起する問題は複雑化しており、いわゆる文系、理系という単純な思考による解決が難しく、文系と理系双方の視点を持った文理融合型の思考力を持つ必要があるのです。例えば、中央大学では20年に「AI・データサイエンスセンター」、21年に「ELSI(Ethical,LegalandSocialImplications)センター」が発足されました。AI・データサイエンスセンターでAI機能を使いデータ分析をしていく過程において、倫理上あるいは社会上、法学上の懸念が無いわけではありません。そこでELSIセンターがAIデータサイエンスセンターの方向性をコントロールする役割を果たします。AI・データサイエンスセンターがアクセル、ELSIセンターがブレーキあるいはハンドリングの役割を担うことで、文系と理系の視点を融合したバランスの良い研究を行っていきます。―移転の目的に文理融合教育の強化があるそうですね。これまで理工学部が都心の後楽園キャンパス(東京都文京区)、文系学部が多摩キャンパスという大まかな棲み分けがありましたが、法学部が都心に移転することにより、文理融合教育を展開します。都心の市ヶ谷田町キャンパス(東京都新宿区)には、文理融合の先駆けといえる国際情報学部があるので、法学部と理工学部、国際情報学部の3学部が共同で文理融合教育を実践します。その一つが3学部共同開講科目です。例えば、自動車の自動運転について考える際、技術面やデータ分析などを担う理工系の領域と、事故を起こした時の責任問題などに関する法学的な領域があります。そのときに求められる、理工系と社会科学系の多方面から分析する視点を身に付けることが狙いです。大学教育で重要なことは、基礎知識や前提知識をベースとして、問題を解決するための思考の在り方を身に付けることであり、3学部共同開講科目は、「實地應用ノ素ヲ養フ」の精神に通じるものです。―共同開講科目以外の教育の変化はありますか。法学部の卒業生の中には、弁護士や公務員、企業で活躍している人材が豊富にいます。これまでも、そうした実務家を招いた実践的な授業を展開してきましたが、都心に移転することで実務家の方の利便性が増すので、こうした授業をより充実させたいと考えています。―初年次教育の現状と今後について教えてください。大学での学びの助走期間として、文献の探し方や情報収集方法、文章の書き方に加え、専門科目を勉強するために必要な力を養う初年次教育に力を入れています。学科の特性に合わせて14、15人ぐらいの少人数クラスのゼミナール形式で展開し、ほぼ全員が履修しています。23年以降は、法律学科の初年次教育が変わります。2年次以降の専門教育に対応するため、条文の読み方や適用の仕方など、専門教育に近い法の解釈に関する授業について、少人数クラスでディスカッションをしながら進めていきます。併せて、一般の論文とは異なる、法律を使ったレポートや論文を書く練習も取り入れます。本文432・433ページもご参照ください初年次教育の充実により確かな専門教育につなげる都心へのキャンパス移転で文理融合教育を強化キャンパス◆ズームアップ